小規模事業者への認知度アップを狙い逆境の中でも掴んだきっかけ

片野さん シモジマとして特に課題だと感じていたのは、地域ごとの知名度の格差でした。本社がある東京を中心に、業界では「シモジマ」の名は知られているものの、東京から離れるほど消費者の認知度は下がっていきます。正直なところ、フランチャイズ店の「パッケージプラザ」は知っているけれど、シモジマという名前を知らないという方が他地域では多い状態でした。
 
神永さん ずっとBtoB中心でやってきた私たちにとって、認知度向上は大きな課題でした。特に個人事業者や小規模事業者の方々への認知が不足していたのです。そんな中で、球場広告であればtoC、さらにリクルートに対しても一定の効果が見込めるのではないかという点も、決め手の大きな理由の一つでしたね。
 
片野さん そもそものきっかけは、2019年に私たちの方から阪神甲子園球場のショップへ持ち帰り用の袋の営業に行ったときのことです。阪神コンテンツリンクさん側から「来シーズンに向けて、広告をはじめもっと大きなお取り組みをいっしょに進めませんか」と、ご提案していただいたことが始まりだったんです。
 
当時は、広告投資に社内でも否定的な声が大きかったので、正直私自身も悩みました。当然それまでも様々な広告手段を試していて、テレビCMを流したこともあったのですが、効果は限定的だと感じていました。ただ、関西圏における阪神タイガースと阪神甲子園球場の知名度は絶大です。なんとか関西圏での認知拡大を狙うために、このチャンスは逃したくないと考えるようになりました。
 

環境への共感から始まる想定外の広がりを見せた協業

片野さん 実際のスポンサーシップは、当初想定していた以上の展開を見せていきました。現在は、ベンチ内壁面での広告掲出、阪神甲子園球場さんが主導する環境保全プロジェクト「KOSHIEN“eco”Challenge」へのエコパートナーとしての参画、阪神タイガースのチームスポンサーなど多岐にわたっています。
 
広告掲出から始まった関係が大きく変わるきっかけとなったのが、2021年12月に始まったKOSHIEN“eco”Challengeとの出会いでした。当初は認知度向上を主目的としていましたが、阪神甲子園球場の環境保全への取り組みを知ることで、新たな可能性が見えてきたんです。
 
神永さん 正直、ここまで環境保全に積極的に取り組まれているとは想像していませんでした。私たちの「事業を通じ快適な社会づくりに貢献する」という経営理念と驚くほど合致していたのです。運命的ともいえる、そんな出会いだったと思います。
 
片野さん 特に反響が大きかったのは、球場で使用されたビールカップのリサイクル事業です。エコパートナーの他社とも協業して、球場で使用したカップから生まれるリサイクル素材を使用し、球場がある西宮市指定の事業用ゴミ袋を作る。これが阪神甲子園球場の主導により、阪急・阪神電鉄系列の商業施設や駅にも展開されることになりました。企業間のつながりがこんなにもダイナミックに広がっていくとは、私たち自身が驚いているほどです。
 
神永さん 実際の運営面でも、阪神コンテンツリンクさんのサポート力には目を見張るものがありました。特に冠協賛試合では、企画の枠組みが完全に整っていて、私たちはやりたいことを伝えるだけ。後は全て任せられる安心感がありました。4万人以上の大観衆の前で自社をアピールできる貴重な機会を、余すことなく活用できたと思います。
 

理念と実績の両輪で進む予想を超える大きな手応え

 
片野さん 私たちのスポンサーシップは、数字では測れない大きな価値を生み出しています。特に印象的だったのが、冠協賛試合でのエピソードです。エネルフィッシュという商品をサンプリング配布したんです。これは海洋生分解性の素材で、万が一魚が食べても苦みで吐き出すという特殊な袋なのですが、サンプリングされた商品を見た関西の大手フィッシングチェーン店から「ぜひ採用したい」というオファーをいただきました。その後、水族館なども含めて全国的に取り扱いが広がっていったんです。
 
神永さん 取引先との商談でも、プロ野球のテレビ中継に映る広告効果により、明らかに認知度が向上したと実感しています。 今後は、定量的な効果測定を行い、より具体的な数値で効果を示していきたいですね。
 
片野さん このスポンサーシップは社内でも徐々に評価が変わってきました。否定的な声もあった当初と比べ、KOSHIEN“eco”Challengeを通じた具体的な成果が見えてくると、次第に理解者が増えていきました。
 
神永さん 特に人事部門からは、アスリート向けの採用説明会で阪神タイガースのスポンサーであることをアピールしたいとの依頼が定期的に来るようになりました。
 
片野さん その中でも最も大きな成果だと感じているのは、環境保全活動を通じた企業間連携の広がりです。一社では難しい循環型の取り組みも、KOSHIEN“eco”Challengeを通じて仲間が増えることで実現可能になっていく。阪神甲子園球場・阪神タイガースという強力なプラットフォームを得たことで、より多くの企業との協業が可能になりました。
 
神永さん 私たちはこれからも新しい挑戦を続けていきたいと考えています。阪神タイガースの公式SNSの影響力は絶大ですから、今後はお互いのSNSを活用したキャンペーンなど、新しい形での情報発信にも挑戦していきたいですね。
 
片野さん スポンサーシップ開始から数年が経ちました。当初、これだけの事業創造につながるとは、正直想像していませんでした。今では、私たちの環境保全活動の象徴的な取り組みとして、社内外から注目されています。
 
もちろん、課題もまだまだあります。循環型の取り組みを継続していくには、量的にも価格的にも規模の確保が必要です。でも、「同志」を増やしていけば、どんどんハードルは下がっていく。実際、ペットボトルにしても、カップにしても、他のパートナー企業と協力し、一緒になって回収して、一緒になってモノを作って、一緒になって使う。この循環の輪を広げていけば、コストも下がり、より多くの企業が参画しやすくなるはずです。
 
神永さん 阪神甲子園球場・阪神タイガースの大きな発信力やブランド力は、環境保全という理念の実現さえもここまで加速させてくれる。そのことに驚いています。その発信力を大いに活用させていただき、この取り組みを企業間連携による持続可能な社会の実現に向けた新しいロールモデルとして、全国に広げていくことで、サステナブルな社会の実現に貢献していきたいと考えています。

[担当者のコメント]
阪神コンテンツリンク  野﨑
シモジマ様とは約10年近く関わらせていただいていますが、常に新しいチャレンジに前向きに取り組んでこられました。特に印象的なのは、広告宣伝だけでなく、人事やCSRなど、様々な部署にメリットをもたらすコンテンツとして活用されている点です。まさに「オール・シモジマ」での取り組みとしてどんどん進化されている事は、私たちにとっても大きな励みとなっています。